薄毛やAGA(男性型脱毛症)、FAGA(女性型脱毛症)に悩む方にとって、治療の選択肢は今やとても幅広くなっています。昔ながらの育毛剤や飲み薬に加え、髪の毛を人工的に増やす「増毛サービス」などもありますが、最近では「再生医療」の考え方を取り入れた新しい治療法も登場しています。
その中でも注目されているのが、「エクソソーム」という極めて小さな物質を利用した治療法です。エクソソームは、細胞同士が情報をやりとりするための“メッセンジャー”のような役割を持っており、毛髪の再生を促す効果が期待されています。
今後3回にわたり、エクソソームがどのようにして髪の再生を助けるのか、その仕組みの解説と、従来の治療薬である「ミノキシジル」や「フィナステリド」、有名な増毛サービス「アデランス」や「マープ」との比較も行い、それぞれのメリット・デメリット、料金や効果の持続性、治療アプローチの違いについても詳しくご紹介していきます。
これまでの薄毛治療は、髪に栄養を与えたり、頭皮の血行を良くしたりする「対症療法(症状を一時的に和らげる方法)」が中心でした。しかし最近では、「エクソソーム」という先端技術の登場によって、治療は新しい段階へと進化しています。
エクソソームを使った治療では、髪を生み出す根本的な仕組み――つまり「毛包(もうほう)」と呼ばれる髪の“工場”の働きに直接アプローチします。毛包には「ヘアサイクル」と呼ばれる成長のリズムがありますが、このサイクルが乱れると薄毛が進行してしまいます。
エクソソーム毛髪再生医療は、そうしたヘアサイクルに遺伝子レベルで働きかけ、正常なリズムに戻すことを目指す、いわば「根本からの改善」といえる方法なのです。
髪の毛には、一定のサイクルがあります。
まず、ぐんぐん伸びていく「成長期(アナゲン)」、その成長が止まり、抜ける準備に入る「退行期(カタゲン)」、そして毛根が休んでいる状態の「休止期(テロゲン)」です。
しかし、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)では、男性ホルモンの影響などによってこのヘアサイクルが乱れてしまいます。特に、髪が伸びる「成長期」がとても短くなってしまうのが特徴です。そのため、髪が十分に太く長く育つ前に抜けてしまい、どんどん薄毛が進んでしまうのです。
エクソソーム毛髪再生医療では、この乱れたサイクルに対して次の2つの大きな働きかけをします。
1.休止していた毛根を目覚めさせ、成長期へと導く
2.一度始まった成長期を、より長くキープして太くしっかりした髪に育てる
このように、エクソソーム毛髪再生医療は、髪の「生まれ変わる力」にしっかり寄り添う、新しいアプローチなのです。
エクソソームとは、細胞から自然に分泌される、とても小さなカプセルです。大きさはわずか直径50〜150ナノメートルほど(1ナノメートルは10億分の1メートル)。皮膚の細胞の大きさと比較すると約250分の1と、とても小さな物質ですが、その中には体の働きに大きな影響を与える重要な成分がぎっしり詰まっています。
具体的には、「成長因子」と呼ばれる細胞の活動を活性化させる物質が数百種類も含まれており、さらに「マイクロRNA(miRNA)」という、遺伝子の働きを後天的にコントロールする成分も含まれています。これらの成分が、細胞の再生や修復をサポートするのです。
このエクソソームの働きを活用した治療法全般は「エクソソーム再生医療」、特に毛髪に対する治療は「エクソソーム毛髪再生医療」などと呼ばれています。
エクソソームを頭皮の奥(真皮層)に注入すると、髪の成長をコントロールしている「毛乳頭細胞」や、実際に髪の毛を作り出す「毛母細胞」に取り込まれます。そしてカプセルの中の成分が細胞内に放出され、髪の再生を促す壮大な細胞再生のオーケストラが始まります。
● KGF(ケラチン生成細胞増殖因子)
KGFは、髪を作るもとになる「毛母細胞(もうぼさいぼう)」に働きかけて、その分裂を活発にする成分です。髪の主な成分である「ケラチン」というタンパク質の合成を直接指令する役割もあるため、「髪を作れ!」という命令を出す“製造司令塔”のような存在です。
● PDGF(血小板由来増殖因子)
髪の成長には「ヘアサイクル」というリズムがありますが、PDGFはその中でも「成長期(アナゲン)」を長く保ち、髪が抜ける準備に入る「退行期」への移行を遅らせるよう調整してくれます。ヘアサイクルの「期間」を正常に保つはたらきがあります。
● VEGF(血管内皮細胞増殖因子)
VEGFは、毛包のまわりにある毛細血管を新しく作る手助けをします。血管が増えることで、髪の毛に必要な栄養や酸素がスムーズに届くようになり、髪がしっかりと育つ“栄養の土台”が整います。
● HGF(肝細胞増殖因子)
HGFは、髪をつくる毛母細胞の成長をサポートするだけでなく、細胞が自然に死んでしまう「アポトーシス」と呼ばれる働きを抑えてくれるのが特徴です。これにより、毛包そのものの“寿命”を延ばす効果が期待できます。
これらの成長因子が連携して働くことで髪の再生が進む一方で、エクソソームの「真の強み」ともいえるのが、マイクロRNA(miRNA)の働きです。
miRNAとは、遺伝情報の調整役のような存在です。特定の「mRNA(遺伝子の設計図のようなもの)」にくっついて、その設計図がタンパク質に変わるのを止める働きがあります。簡単にいうと、「この遺伝子は働かなくていいよ」とブレーキをかけるスイッチのような存在です。
薄毛の人の毛乳頭細胞(髪の成長を指示する細胞)では、髪の成長を邪魔する遺伝子が必要以上に活発になっていることがあります。エクソソームに含まれる特定のmiRNAは、この“髪を育てないようにするスイッチ”をオフにし、逆に発毛をうながす働きをもつ遺伝子が活性化されやすい環境に整えてくれるのです。
その結果、髪をつくる細胞たちが本来持っているポテンシャルを、内側からしっかりと引き出すことができるようになります。
最先端のクリニックで使用されるエクソソームは、幹細胞(体のさまざまな細胞に変化できる力を持った細胞)を培養したときに得られる「上清液(じょうせいえき)」という透明な液体から抽出されます。
この「上清液」とは、幹細胞を培養(育てる)した後に、細胞そのものを取り除いて残る液体のことで、その中には細胞が分泌した栄養豊富な成分――エクソソームや成長因子、miRNAなどがたっぷりと含まれています。
そして、どんな種類の幹細胞(脂肪、歯髄、臍帯、骨髄など)を使っているかによって、成長因子やmiRNAの種類・割合が変わります。
なかでも、乳歯髄や臍帯といった「若くて再生力が高い細胞」から作られるエクソソームは、特に細胞の増殖や組織の修復能力が高いとされています。
そのため、重度のAGA(男性型脱毛症)や、広範囲にわたる薄毛の方に対しても、よりしっかりとした効果が期待できるのです。
今回ご紹介したように、エクソソームを使った薄毛治療は、髪の再生を助け自然なヘアサイクルを取り戻す方法です。遺伝子レベルで働きかけることで髪をつくる細胞たちが本来持っているポテンシャルを内側からしっかりと引き出して正常なリズムに戻します。従来の対処療法ではない、「根本からの改善」が期待できる治療法なのです。
次回は、従来の治療薬「ミノキシジル」や「フィナステリド」、さらに有名な増毛サービス「アデランス」や「マープ」の特徴を取り上げ、それらを比較していきます。ぜひご覧ください。
かずみクリニックではエクソソームによる毛髪再生医療をおこなっています。
個別の症状に合わせたカウンセリングを行い、最適な治療計画・治療方法をご案内いたしますので、薄毛や抜け毛、毛量のボリュームダウン等にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
仙台市青葉区「青葉通一番町駅」からすぐの女性医師の婦人科 / 性病検査・月経移動・ピル処方・緊急避妊薬なら
受付時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日/祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00- 12:15 |
● | ● | ● | ● | ● | 休 | 休 |
14:00- 16:30 |
● | ● | ● | ● | ● | ■ | 休 |
※不定期で室井医師が不在のことがあります。診療カレンダーでご確認ください。