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2026年10月28日

「食欲の秋」に負けない脳の話 ― ウゴービはなぜ無理な我慢をせずに食欲を抑えられるの?

秋に食欲が増えるのはなぜ?


夏が終わると、急に食欲が戻ってくる。そんな経験、ありませんか。これは気のせいではありません。
満腹感をつくる脳内物質のひとつに、セロトニンがあります。「幸せホルモン」とも呼ばれ、日光を浴びる時間が長いほど、たくさんつくられます。夏から秋にかけて日照時間は短くなり、セロトニンの分泌量も一緒に減っていきます。すると満腹のサインが脳に届きにくくなり、食欲にブレーキがかかりにくくなるのです。気温の低下による代謝アップも重なり、「食欲の秋」は意志の弱さではなく、脳と体の自然な季節反応として起こります。
だからこそ、この時期のダイエットを気合いだけで乗り切ろうとすると、しんどくなってしまいます。ここで頼りになるのが、肥満症治療薬のウゴービ(セマグルチド)です。

ウゴービが食欲を抑える仕組みとは?

ウゴービは吐き気で痩せる?よくある誤解

ウゴービについて、「吐き気がひどくて、気持ち悪いから食べられなくなる薬」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。これは正確ではありません。
たしかに悪心(吐き気)や胃の不快感は、副作用として出ることがあります。用量を少しずつ上げていくのは、この副作用をやわらげるためです。けれど体重が落ちていく一番の理由は、吐き気で食事がつらくなることではなく、脳の中にある「食欲そのものを決める仕組み」に働きかけていることにあります。

食欲をコントロールする脳の2つのスイッチ

高校の生物で習う視床下部という場所に、食欲を上げ下げする神経が集まっています。ひとつは空腹時に「まだ食べて」の信号を出す神経、もうひとつは満腹時に「もう十分」の信号を出す神経です。シーソーのような関係で、片方が強く働くと、もう片方はおとなしくなります。
食事をすると腸から「GLP-1」というホルモンが少し出て、「もう十分」の神経を後押しします。同時に胃の中身がゆっくり腸へ送られ、満腹感が長続きします。ただし体内のGLP-1は数分で分解されてしまうため、食後しばらくすると、また空腹を感じてしまうのです。

そしてもうひとつ、視床下部とは別に「ごほうびシステム」と呼ばれる回路があります。専門的には中脳辺縁系ドーパミン報酬系と呼ばれ、おいしいものを食べたときに「うれしい」「もっと食べたい」と感じさせる仕組みです。この仕組みは、食べ物が少ない時代に、食事を求めて生き延びるために発達してきたと考えられています。
けれど食べ物にあふれた今の時代では、「お腹はいっぱいなのに、もっと食べたい」という状態をつくってしまうことがあります。満腹中枢が「量」を管理するのに対し、ごほうびシステムは「食べたい気持ちの強さ」を管理していると言えます。

ウゴービの効き方は、二段構え

ウゴービの主成分セマグルチドは、体内のGLP-1と似た形で分解されにくく、週一回の注射で効果が長く続きます。
近年の研究で、このセマグルチドは視床下部の満腹スイッチだけでなく、ごほうびシステムにも作用することがわかってきました。動物実験では、食べ物への「食べたい」という動機づけそのものが弱まる一方、実際に口にしたときの「おいしい」という感覚自体はあまり変わらない、という報告があります。
食べる楽しみを奪うのではなく、「常に何か食べたい」と急かしてくる気持ちを、そっと静めてくれるイメージです。

興味深いことに、このごほうびシステムへの作用は、食べ物に限らないとみられています。近年の研究では、セマグルチドを使った人が飲酒量を大きく減らしたという報告が相次いでおり、ある観察研究では習慣的な飲酒者の飲酒量が数ヵ月で約7割減ったというデータもあります。
仕組みは食欲と同じで、ごほうびシステムでのドーパミンの働きを抑え、アルコールへの渇望そのものを弱めると考えられています。ただしこれはまだ研究段階の知見で、ウゴービはアルコール摂取を抑えるための薬として承認されているわけではありません。あくまで、脳のごほうびシステムに働きかける薬の副次的な効果として報告されている段階です。

満腹感を長持ちさせる仕組みと、渇望そのものをやわらげる仕組み。この二つが同時に働くことで、無理に我慢しなくても、自然と食事量がおさまっていきます。吐き気は、あくまで薬がGLP-1受容体に作用する過程で起こりうる副作用のひとつです。

ウゴービを使う前に知っておきたいこと

マンジャロと何が違うの?

よく比較されるマンジャロは、成分チルゼパチドの日本での承認が2型糖尿病治療薬としてのものです。同じ成分で肥満症治療薬として承認されているのは、別の製品名を持つゼップバウンド。「マンジャロ=痩せる薬」という語られ方をよく見かけますが、日本の肥満症治療という文脈で正式に比べるなら、対象はゼップバウンドになります。
作用のしくみにも違いがあります。ウゴービはGLP-1という一種類のホルモンの受容体だけに働きかけますが、ゼップバウンド(チルゼパチド)はGLP-1に加え、GIPという別のホルモンの受容体にも同時に働きかけます。臨床試験では体重減少の幅がやや大きく出る傾向がありますが、体質や副作用の出方によって合う薬は変わるため、優劣で単純には決められません。

誰でも使える薬ではない、というお話

ウゴービは日本では「肥満症」と診断された方だけが対象の処方薬で、痩せたい人が自由に選べる市販薬ではありません。保険適用の条件は、BMI35以上であること、またはBMI27以上35未満で高血圧・脂質異常症・耐糖能異常などの健康障害を二つ以上持っていること、のいずれかです。
ただし、BMI23以上でダイエットをお考えの方も、自由診療を含めた体重管理についてご相談いただけます。まずはお気軽にご相談ください。

ウゴービの治療について気になる方は、あおば通りかずみクリニックへ

食欲の秋に食べ過ぎてしまうのは、セロトニンが減って脳の満腹サインが弱くなるところへ、ごほうびシステムが「もっと食べたい」とささやいてくるためです。
ウゴービは吐き気で無理やり食べられなくする薬ではなく、満腹スイッチを後押ししながら、この「食べたい」という信号そのものを弱めてくれます。アルコールへの効果もまだ研究段階ですが、同じ仕組みの延長として注目されています。処方には明確な条件があり、使うかどうかは医師とじっくり相談しながら決めていくことをおすすめします。

あおば通りかずみクリニックでは、GLP-1受容体作動薬「ウゴービ」を用いたダイエット治療(自費診療)を行っています。現在の体重やBMI、健康状態などを確認し、一人ひとりに合った治療をご案内しています。
ウゴービの働きや治療について詳しく知りたい方、減量・ダイエットにお悩みの方、ご自身が治療の対象になるか知りたい方は、あおば通りかずみクリニックへお気軽にご相談ください。

 

医師

執筆

室井 和美
あおば通りかずみクリニック院長
    2000年  順天堂大学医学部 卒業
    2000年~ 公益財団法人 宮城厚生協会坂総合病院 勤務
    2006年~ 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院(千葉県) 勤務
    2008年~ 医療法人成和会 山口病院(千葉県) 勤務
    2009年~ 赤坂ブレストインターナショナルクリニック 勤務
    2010年~ 医療法人社団新宿レディースクリニック会
         新宿レディースクリニック・東京レディースクリニック 勤務
    2011年~ 医療法人浄仁会 大泉記念病院 勤務
    2015年~ 医療法人仁泉会 みやぎ健診プラザ 勤務
    2016年  あおば通りかずみクリニック開院
    2021年  医療法人社団誠母至豊会 設立

https://www.kazumi-clinic.com/doctor/

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